エルヴァン殿下の言葉に、イルドラ殿下はゆっくりと頷いた。
 それは私も、最初に思い付いたことではある。三家は私服を肥やすために娘を犠牲にしている。その可能性はあるだろう。
 ただ、私には気になっていることがあった。それは、ネメルナ嬢のことである。

「エルヴァン殿下、しかしながらネメルナ嬢はアヴェルド殿下に熱烈な愛を向けていました。彼女は家のためにその身を捧げているという感じではないと思います」
「別にその二つは矛盾しないのではありませんか? 家のために身を捧げる人物が、偶々惚れ込んだ者だったというだけで」
「これは私の感覚の話ではありますが、ネメルナ嬢はそういった事情について知らないと思います。根拠はありません」

 エルヴァン殿下の言う通り、彼女が家の策略を知った上で関係を持っているという可能性は、ない訳ではない。