彼は彼で、王国のことを思って行動しているということだろう。曲者ではあることは間違いないが、案外真面目な王子なのかもしれない。

「大まかで構わないのだが、大体どの辺りの税金が誤魔化されているんだ?」
「三家の貴族に関わる税金です。オーバル子爵家、モルダン男爵家、ラウヴァット男爵家、この辺りが怪しいですね。アヴェルド兄上と何か繋がりがあるのではないでしょうか?」
「……何?」

 エルヴァン殿下の言葉に、私はイルドラ殿下と顔を見合わせた。
 彼が述べた三家には、聞き覚えがある。それらは、アヴェルド殿下が関係を持っている令嬢の家だ。
 どうやらこの問題にも、彼の女癖の悪さが関わっているようである。いやもしかしたら、問題はさらに根深いものなのかもしれない。