「失礼ながら、わかっているなら他の令嬢との関係なんて断ち切るはずです。私との婚約が成立する前から付き合いがあったのかもしれませんが、遊びなら遊びと割り切れるようにしてください。それが私の求めていることです」

 私は言葉を発しながら、アヴェルド殿下の様子を伺っていた。
 彼は、私に対して鋭い視線を向けている。私の言うことが、気に食わないということだろう。
 やはり彼は、本気ということなのだろうか。私を排除し、あのネメルナ嬢と結ばれたい。そう思っているのかもしれない。

「……君はいつもそうだな?」
「はい?」
「君はいつも合理的だ。冷たいくらいにね」

 私から言葉を受けていたアヴェルド殿下は、少しの沈黙を挟んだ後にそう言ってきた。
 彼はどうやら、かなり怒っているようだ。浮気の話をされたのが、そんなに嫌だったということだろうか。