なんとなくではあるが、二人の仲は険悪という訳ではなさそうだ。それらのやり取りは、兄弟間での戯れといった所だろうか。
 ただ気になるのは、私の存在が完全に忘れ去られていることである。というかエルヴァン殿下は、私に気付いてすらいないのではないだろうか。

「まったく、イルドラ兄上は仕方のない人ですね……それで、話とはなんですか?」
「お前に聞きたいことがある。これは王家にまつわる重要なことだ。心して聞くんだぞ?」
「前置きが仰々しいですね。また何か問題ですか?」
「ああ、問題だな。嫌になるくらいの大きな問題だ」
「それを聞かなければならないという事実が、嫌なのですが……」
「お前も王族の一員だろう。ちゃんと聞いておけ」

 エルヴァン殿下は、まったく気乗りしていないようだった。