「な、なんということだ。リルティア嬢、これは問題です。兄上の愚かなる行いを、僕は糾弾しなければなりません」
「ウォーラン殿下、どうか落ち着いてください」

 ウォーラン殿下は、焦ったような顔をしていた。
 彼は王族の中でも、真面目な方だと聞いている。どうやら彼は、その評価通りの人であるらしい。その表情からは、それが伝わってくる。
 ただ、私は彼を止めなければならない。今アヴェルド殿下を糾弾されると、エリトン侯爵家が少し困る。できればそれは、避けたい所だ。

「リルティア嬢、どうして止めるのですか?」
「これは大きな問題です。慎重に行動するべきことだということを理解してください」
「慎重に行動……確かに、そうですね。すみません、焦っていました」

 私の言葉に、ウォーラン殿下の勢いは収まった。
 彼は話がわかる人であるようだ。そのことに、私はとりあえず安心する。
 ただ、どうにかしなければならないことであるのは確かだ。このままだと、エリトン侯爵家が余計な被害を受けかねない。