「はあ……」

 王城のベランダで、私はゆっくりとため息をついた。
 とりあえず、エリトン侯爵家の計画は上手く進んでいる。それ自体は、安心することができることだ。
 ただ、流石に私も疲れてしまった。ここ連日は、色々と策略を働いている。それによって、精神が摩耗しているようだ。

「あれ? あなたは確か……」
「……うん?」

 そこで私は、後ろから聞こえてきた声に振り向いた。
 すると一人の青年の顔が、目に入ってきた。
 その青年のことは、当然知っている。彼はこの国の第三王子であるウォーラン殿下だ。

「ウォーラン殿下、お久し振りです」
「ええ、お久し振りですね、リルティア嬢……その、なんと言ったらいいのかわかりませんが」
「ああ……」

 ウォーラン殿下は、私に対して少し遠慮しているようだった。