「貸しか、なるほど、それならそちらにもある程度の利益がある訳か」
「ええ、少なくともアヴェルド殿下と険悪になるよりはいいですからね」

 アヴェルド殿下は、私の行動を自分の中で噛み砕いているようだった。
 王族への貸しが大きな利益であるということは、彼もよくわかっているだろう。増してや、彼は王太子である。次期国王との関係を良好にして、かつ有利に振る舞える土壌を作った。私の行動は、それ程変なことでもないだろう。

「どうか、これからもよろしくお願いします、アヴェルド殿下」
「あ、ああ……いや、その、そうだな」

 私が差し出した手を、アヴェルド殿下は遠慮がちに取ってきた。
 彼は今、どのようなことを考えているのだろうか。少し焦っている所を見ると、今が彼にとって良い状況という訳ではなさそうだ。
 もっとも、それは私にはそれ程関係がないことだ。こちらはこちらが有利になるように動いていくだけである。