私の言葉に対するアヴェルド殿下の反応は、なんというか悪い。
 彼はシャルメラ嬢との間にも関係を持っている。そんな彼にとって、彼女と結ばれることはそこまで重要なことではないのだろう。それが表情から伝わってきた。
 だが、それを私は気付かない振りをして話を進める。私はあくまでも、善意の第三者として振る舞わなければならないのだ。

「お二人が未だに愛し合っているというなら、私が身を引くことによって丸く収まると思うのです。勝手なことですが、国王様にもある程度の事情を説明しました。納得してくれましたよ」
「……そのようだが」
「もちろん、何の見返りも求めていないなんてことはありませんよ。私はアヴェルド殿下やネメルナ嬢と、いい関係を築いておきたいと思っているんです。恩着せがましいかもしれませんが、今回の件は貸しを一つ作ったとお考えください」