私とアヴェルド殿下の関係は、既にほとんど断ち切られたといえるだろう。その後に何か起こったとしても、ほとんど打撃はない。
 とはいえ、ある程度落ち着くまでの時間は空いて欲しいものだ。シャルメラ嬢がどのような女性かは知らないが、少し大人しくしてもらえるように取り計らう必要があるのかもしれない。

「おっと、リフェリナ嬢は兄上とも話をしなければならないんだったな。そういうことなら、俺はそろそろ失礼するべきか」
「そうですね。そうしていただけると助かります……イルドラ殿下、色々とありがとうございました」
「いや、気にする必要なんてない。俺にも利益がある訳だからな……」

 イルドラ殿下は、少しだけ寂しげな顔をしていた。
 アヴェルド殿下が糾弾された後、何が起こるかは明白だ。そうなった時に自らに与えられる地位を、彼は歓迎しているという訳ではないのかもしれない。
 だから今の言葉は、私に対する気遣いなのだろう。利益が得られるから、見返りはいらない。そう言える彼は、なんとも優しい人である。