アヴェルド殿下との婚約を取り消すことは、そう難しいことではない。彼の浮気を糾弾すれば、私達に非もなく、その婚約を破棄することはできただろう。
 ただ、その方法は社交界での心証を悪くする可能性がある。婚約破棄や破談だけで、負のイメージがついてしまうのだ。
 故にお父様は、それに美談を含めることにしたのである。私が二人のために身を引いた敬虔な令嬢であると、社交界に印象付けるのだ。

「父上は恐らく、兄上とネメルナ嬢の縁談を進めるだろう。それは特に、反対されることもないはずだ。兄上以外、反対する理由がある者がいないからな」
「ネメルナ嬢はもちろん、オーバル子爵家にとっても願ってもいないことですからね。国王様さえ納得しているなら、大丈夫でしょう」
「その話がある程度進んだ折に、俺がシャルメラ嬢との関係を暴露する。兄上にとっては、それは痛手になるだろう。もっとも、その前にシャルメラ嬢が動くかもしれないが」