「上手く父上を言いくるめられたようだな、リルティア嬢」
「……そうなのでしょうか?」
「父上から話を聞いたが、概ねあなた方の計画通りにことは進みそうだ」
「そうですか。それなら嬉しいです」

 客室で少し休ませてもらっていた私の元に、イルドラ殿下がやって来た。
 彼はとても、嬉しそうにしている。本当に私達の計画の成功を確信して、喜んでくれているのだろう。
 それは私としても嬉しいことではある。私がアヴェルド殿下から逃れるにあたって、これが最良であると思うからだ。

「どうやら私は、アヴェルド殿下とネメルナ嬢のことを思って身を引いた令嬢になることが、できそうですね……」
「ふ、エリトン侯爵は流石だな。ただで引き下がるようなことはしない。リルティア嬢の社交界での評判を落とさずに兄上から逃れるとはな」
「まあ、それは私達にとっての死活問題ですからね」