国王様は、私のことをじっと見つめている。
 それはまるで、何かを値踏みしているかのようだった。
 私は国王様を、きちんと納得させなければならないのだろう。それは骨が折れることではあるが、頑張るしかない。

「国王様にこのようなことを申し上げるのは申し訳ない限りではありますが、私はアヴェルド殿下のことを愛しているという訳ではありません」
「まあ、それはそうだろう。君達の結婚は、私とエリトン侯爵が決めたものだ」
「婚約というものは、愛などではなく割り切ってするものだとは思っています。しかし、愛があるにこしたことはありません。そういった意味でも、私よりもネメルナ嬢の方がアヴェルド殿下の婚約者としては相応しいと思うのです」

 私の言葉に、国王様は考えるような仕草を見せた。
 人情家の一面も持つ国王様にとって、私の訴えかけはそれなりに効果があるようだ。
 もっとも、ネメルナ嬢がアヴェルド殿下と婚約できるかどうかは、正直どうでもいいことではある。私としては、これが善意の行動だとわかってもらえればそれでいいのだ。