ただこれは、何れ義理の父親になる人に婚約者のあれこれを相談しに来た、なんて軽いものではない。話はもっと、根深いものなのだ。

「アヴェルド殿下には、想い人がいらっしゃるようです」
「……何?」
「オーバル子爵家のネメルナ嬢という方です。どうやら私との婚約が決まる前に、お付き合いしていたようです」

 国王様は、私の言葉に固まっていた。
 その反応からして、ネメルナ嬢のことは知らなかったということだろう。
 アヴェルド殿下は、そういった女性関係を隠すのは上手かったようだ。イルドラ殿下にも悟られていなかった訳だし、私に見つかったのはどちらかというとネメルナ嬢の行動が、原因なのかもしれない。

「お二人は愛し合っていたそうです。ネメルナ嬢も、貴族としての打算などはなく、純粋にアヴェルド殿下個人を見ていたようです」
「……」