そもそも王子と平気で浮気するような人が、何故上から目線で私に言葉をかけているのだろうか。まさかその行動が、王妃になれる可能性があるから、家のためになるとでも思っているということだろうか。

「もちろん、私が王妃になることはエリトン侯爵家の利益になります。ただ、今回の件で私はアヴェルド殿下に恩を売ることができますよね?」
「恩……」
「愛し合っているネメルナ嬢と結ばれるように、私は動くのです。感謝されるのは当然のことではありませんか?」
「それは……」
「それに、王妃になることだけが王族との繋がりではありません。幸いにも、アヴェルド殿下以外の王族の婚約は決まっていません。その辺りをアヴェルド殿下に取り計らってもらうことにしますよ」

 私は、適当にそれらしい理由を作った。