「良いと思っているからこそ、そう言っているのではありませんか。逆に考えてみてください。冗談でこのようなことを言うと思いますか。あなたの元をわざわざ訪ねて、それで私に何のメリットがあるというのでしょう?」

 ネメルナ嬢は、顎に手を当てて考え始めていた。
 当然、私の言葉を吟味しているのだろう。
 ここであり得ないと思われてしまったら、今回の計画は破綻することになる。そういうことならそういうことでも構わないのだが、できればネメルナ嬢には信じてもらいたい所だ。

「……何か私に、要求があるのではありませんか?」
「え?」
「アヴェルド殿下と婚約破棄するなんて、あなたにはまったく持ってメリットがないではありませんか。何か私やオーバル子爵家に対して要求があると思うのが、普通です」

 少し思案した後、ネメルナ嬢は私に質問をしてきた。