「お二人のために、身を引くという言い方は、少々上から目線過ぎるかもしれませんね。ですが、私は私個人の判断として、アヴェルド殿下との婚約を破棄したいと考えています」

 私の言葉に、ネメルナ嬢はその目を丸めていた。
 こんなことを言われるなんて、考えてもいなかったようだ。かなり動揺しているのが、その表情から見て取れる。
 とりあえず私は、ネメルナ嬢の言葉を待つことにする。彼女にはきちんと、話を聞いてもらわなければならないからだ。

「こ、婚約破棄なんて、正気ですか?」
「ええ、正気ですよ。私は本気でそう言っています」
「王族……それも王太子との婚約を破棄するなんて、あなたはそれで良いというのですか?」