突然の涙と謝罪に、ネメルナ嬢はかなり面食らっているようだった。既に怒りは、どこかにいってしまったらしい。
 これでなんとか、話を聞いてもらえそうだ。それに私は、とりあえず安心するのだった。

「ネメルナ嬢は、アヴェルド殿下とお付き合いしているのですよね? それは、他の誰にも伝えていないということでよろしいのでしょうか?」
「ええ、そうですけれど」
「明かすことができない理由は……やはり地位でしょうか?」
「……まあ」

 ネメルナ嬢は、私に対する警戒を少し解いているようだった。
 突然の涙と謝罪は、彼女の心を解す効果があったということだろう。アヴェルド殿下を奪った敵という認識は、既に薄れていると考えても良さそうだ。
 話が早いため、それはこちらとしてはとても助かる。彼女が余計なことを考える前に、畳みかけておくことにしよう。