問題なのは、彼女の主張にアヴェルド殿下が同意している点だ。
 彼は、正当なる婚約者である私のことを軽んじているということだろうか。それなら私にとっては、大きな問題だ。

 浮気については、百歩譲っていいとすることもできる。
 王太子としての役目を忘れないというなら、多少は見逃しても良い。
 しかし彼女に必要以上に入れ込んでいるとなると、話は別だ。いざという時になってから、彼女の方を優先されたりしたら、溜まったものではない。

「まずはアヴェルド殿下の真意を聞かなければならないわね……」

 この場に出て行って彼を糾弾することは可能だ。
 しかし、それで王家との婚約が壊れてしまったら大変である。私はあくまでも慎重に、ことにあたらなければならない。
 故にここは、とりあえず成り行きを見守っておくことにした。こうして私は、アヴェルド殿下とネメルナ嬢が親しそうに話すのを見守るのだった。