「まったく、兄上は愚か者だ。浮気なんて、なんとも馬鹿なことを……それに兄上は、平然と嘘をつく。俺にシャルメラ嬢とは清い関係で、リルティア嬢との婚約を機に別れると言っていたというのに、全てが真っ赤な嘘だ」
「まあ、本人としては清い関係という可能性もあるのでしょうけれどね……」

 アヴェルド殿下は、浮気性で嘘つきだ。それは最早、疑いようのない事実である。
 イルドラ殿下は、そのことにかなり怒っているようだ。弟である彼にとっては、私以上に辛いことなのかもしれない。

「当然のことながら、兄上との婚約は考え直すのか?」
「そうですね……そうなると思います。そもそもの話として、この事実が公表された場合、アヴェルド殿下の立場も怪しくなるでしょうし」
「まあ、そうだろうな。流石の父上も、こんなことをした兄上を王位を譲りはしないだろう。エリトン侯爵家にとっても、大きな打撃になるか」