多分お兄様なら、本当に私の面倒くらい見てくれるだろう。婚約者であるラフェシア様も、きっと歓迎してくれる。そうなったら、割と楽しい生活が送れそうだ。
 ただ、そうなりたいと思えるという訳でもない。私はエリトン侯爵家の一員だ。できれば、家のために役に立つという本懐を遂げたい。

「でもなんというか、お兄様達のような関係性は理想的なのでしょうね」
「理想的? 僕達がか?」
「ええ、愛し合っている訳ですからね。政略結婚でありながらも、確かな愛があるというのは、素晴らしいことであるように思えます」
「まあ僕達の場合は、偶々家柄が同等の人を好きになって、その結果として縁談がまとまることになった訳だけれど……」

 お兄様とラフェシア様は、恋愛感情から縁談が決まったタイプだ。
 お互いに家は同じ侯爵だったということもあって、話はスムーズに決まった。
 できることなら、私もそのような婚約がしたかったものだ。そういう婚約であったなら、今回のような面倒なことにはならなかっただろうし。