「他の王族は、まだ婚約などは決まっていません。仮にアヴェルド殿下との婚約を考え直すというなら、他の王子に当たるべきではないでしょうか? 彼が王位を継ぐかどうかも、見直されると思いますし」
「……まあ、それは確かに一つの案ではあるな」

 とりあえず私は、最初に思い付いたことをお父様に言ってみた。
 ただ、お父様の反応は悪い。なんとなく予想していたことではあるが、既にそれについては考えていたということだろうか。

「難しいことでしょうか?」
「王族との婚約は、誰もが虎視眈々と狙っていることだからな。私はアヴェルド殿下との婚約によって安心していた所がある。我ながら情けない話ではあるが、他の貴族と比べて出遅れているとしか言いようがない」

 別にお父様は、出遅れているという訳ではない。むしろ一歩先まで行っていたといえる。
 アヴェルド殿下がまともな人だったなら、私は思わずそう考えてしまった。
 しかしそんなことを考えても仕方ない。私達は起こったことに対処していくしかないのだから。