「ネメルナ、君と会えることは僕も嬉しく思っているよ。しかしだ、王城まで訪ねられると困ってしまう。僕と君との関係は、決して公表できるものではないということは、君だってわかっているはずだ」
「申し訳ありません、アヴェルド殿下。しかし、私はまだ今回のことには納得していません。どうしてあのような、何のとりえもない女がアヴェルド殿下の婚約者になるのですか? あなたの婚約者に相応しいのは、私のような者です」
「気持ちはわかるが、どうか落ち着いてくれ」

 アヴェルド殿下は、見知らぬ令嬢と親しそうに話をしていた。
 その話の内容は、私のことであるだろう。ネメルナ嬢からすれば、私のことが気に食わないということらしい。
 自らが嫉妬されるような立場であるということは、考えるまでもないことだ。そのことについて、思う所などはない。