「……いや、俺が知っているのは他の令嬢だ。モルダン男爵家のシャルメラという令嬢を、リルティア嬢は知らないのか?」
「いいえ、知りません」

 私とイルドラ殿下は、お互いの知っていた情報を打ち明け合った。
 その結果、私達の間には見識の違いがあったということが、よくわかった。私達は、それぞれ別の令嬢のことを話していたのだ。
 しかしそれは、なんともおかしな話である。アヴェルド殿下の浮気相手として、どうして違う人物が思い付くのだろうか。

「待ってくれ。それじゃあまさか、兄上はシャルメラ嬢との関係を終わらせた後に、別の令嬢と関係を持っていたということか?」