その表情は、すぐに強張る。私が何を考えているのか、わかったのだろう。そのことについて、考え始めたようだ。

「……なるほど、サジェードについては確かによくわかっていない。言われてみれば、知っていたという可能性もあるな」
「ええ、オーバル子爵は、単純にそのことを知らなかったのかもしれません。ただ、そんな彼の元に事件の関係者であるメルーナ嬢が訪ねたとしたら」
「そうか。サジェードからしてみれば、メルーナ嬢が自分のことを糾弾――いや、脅しに来たとさえ思うかもしれないか」
「その可能性もあると思うんです」

 メルーナ嬢を害したのは、モルダン男爵家のサジェードである。
 私とイルドラ殿下は、そのような予測を立てた。それが当たっているかどうかはわからない。
 ただ、今はともかく行動するべき時だ。モルダン男爵家を調べてみるとしよう。