その様子は、演技とは思えない。心からそう思っているといった感じがする。
 これは、信じても良いものなのではないだろうか。私は段々とそう思えてきた。

「もう一度言っておきますが、私は清廉潔白です。何もしていません。ほら、この通り」

 そう言ってナルーゼは、両手を広げていた。
 その様子は、少し滑稽に思えてしまう。彼は少し、天然なのかもしれない。

 よく考えてみれば、オーバル子爵の思惑に関してはネメルナ嬢もまったく知らなかった。
 それはまず間違いない事実だ。そこから考えると、彼が事実を知らなくても、おかしくはないのかもしれない。

 その事実から、彼はメルーナ嬢を害した犯人ではないと考えるべきだろうか。
 その可能性の方が高いと、私は思っている。まあ本人も言っている通り調査すれば、わかることだろうか。