ただ別に、ナルーゼという人物を信じられる要素はない。その言葉から、真意をなんとか読み取らなければならない。

「メルーナ嬢の失踪に、私は関わっていません。何なら、屋敷を調べてもらっても構いませんよ。どうせこちらにはもう失うものなどありませんからね。父上のせいで、オーバル子爵家は終わりです」

 少し投げやりになりながら、ナルーゼは言葉を発していた。
 当然のことながら、オーバル子爵家は現在大変な状態である。まだ正式には決まっていないが、今後恐らく没落することになるだろう。
 その状態で、メルーナ嬢に危害を加えるものだろうか。いや、投げやりになってそうするという可能性もある。

「もちろん、私にできることがあるならなんでもします。父上や妹の件は、私も危ない可能性がある。没落は仕方ないにしても、私まで捕まるなんてごめんです。少しでも心証を良くしておきたい」

 ナルーゼの言葉には、切実なものがあった。