「なるほどな。リルティア嬢の気持ちがよくわかった。兄上はなんとも情けない男だ」
「ええ、ネメルナ嬢も、あんな人にどうしてこだわるのか、私からすれば理解できませんね」
「……ネメルナ嬢?」
「……え?」

 イルドラ殿下は、面食らったような表情をしていた。
 そんな彼を見て、私も同じような顔になっていることだろう。彼の反応は、明らかにネメルナ嬢のことを知らないものだったからだ。
 そこで私は、ある一つの可能性を考えることになった。もしかしてイルドラ殿下の心当たりとは、別の女性だということだろうか。

「イルドラ殿下、一つ確認しておきたいことがあります。アヴェルド殿下が関係を持っている女性は、オーバル子爵家のネメルナ嬢ではないのですか?」