「話は既に聞いています。メルーナ嬢が行方不明になったようですね」
「ああ、お前も既に動いていたのか?」
「いいえ、動き出したのはリルティア嬢が王城に戻って来たのを聞いてからです。イルドラ兄上が準備しているのですから、僕が余計なことをして混乱を招きたくなかった」
「お前らしい冷静な判断だな。流石だ」
「別に褒められるようなことではありませんよ」

 エルヴァン殿下は、真剣な顔をしていた。
 彼もメルーナ嬢のことを、とても心配しているということが伝わってくる。
 そんな彼の助力は、もちろんありがたい。また一人心強い味方が得られたようだ。

「でも、メルーナ嬢はモルダン男爵家の領地に行っていたんですね……」
「モルダン男爵家の領地か……事件に関係している所に行っていたとなると、色々と勘ぐってしまうな」
「まあ、無関係とは思えませんね。僕も行き先の町の名前を聞いて驚きましたよ」

 エルヴァン殿下のお陰で、メルーナ嬢がどの町に向かって行ったかはわかった。
 その行き先には、何が意味があるように思えてしまう。このタイミングで、わざわざ事件に関係する男爵家の領地に行ったとなると、関係があると考える方が良さそうだ。