王城に戻って来た私は、早速イルドラ殿下に何が起こったかを伝えた。
 出て行く前にウォーラン殿下がある程度の事情を使用人に伝えていたため、イルドラ殿下にも既に事態は伝わっていたようである。彼は色々と、準備をしてくれていたようだ。
 そのため、すぐにメルーナ嬢を乗せた馬車の御者とコンタクトが取れた。その御者は、私から話を聞いて目を丸めて驚いている。反応だけ考えると、何も知らなかったということだろうか。

「ま、まさかそのようなことになっていたなんて……思ってもいませんでした」
「ゼオットさんといいましたか。あなたは、メルーナ嬢をどこに送り届けたのですか?」
「メルーナ様は、途中で行き先を変更して欲しいと言ってきました。その行き先は、ヴェルナルゼという町でした」
「ヴェルナルゼ、ですか」

 御者の言葉に、私は首を傾げることになった。
 この国にある町の名前を当然全て覚えられているという訳でもない。町の名前を聞いても、まったく持ってピンとこないのだ。