状況からして、メルーナ嬢は自らの意思によって失踪したと考えられそうだ。
 となると、嫌な考えが過ってしまう。アヴェルド殿下の一連の事件によって、彼女は傷ついているはずだ。嫌っていたとはいえ父親も失っている。思い詰めていてもおかしくはない。

「リルティア嬢、あなたは王城に戻って御者のことを調べてもらえますか? イルドラ兄上に協力を仰いでください」
「わかりました。ウォーラン殿下はどうされるのですか?」
「僕は、オーバル子爵家を訪ねてみようと思います。ラフェシア嬢、あなたはこちらで待機しておいてください。メルーナ嬢が、こちらを訪ねてくる可能性はあると思いますから」
「そうですね……わかりました。何かあったら、すぐに連絡してください。私はいつでも動けますから」

 ウォーラン殿下の指示によって、今後の方針は決まった。
 こうして私は、王城に戻ることになるのだった。