「でも、馬車で運んでいる最中に何かあったのなら、御者から連絡があるはずですよね?」
「ええ、御者が行方不明になっているという話も聞きませんし、恐らくメルーナ嬢は馬車は下りているのでしょう」
「ということは、メルーナ嬢が自らの意思で途中で降りた?」

 馬車の事情から、メルーナ嬢の行動がある程度予測することができた。
 メルーナ嬢が自発的に馬車から下りたという情報は、既に手がかりといえるだろう。
 しかし彼女は、何を思ってどこで馬車を下りたのだろうか。

「てっきり、オーバル子爵家が何かをしたものだと思っていましたが……そういう訳でもないということでしょうか?」
「メルーナ嬢が途中で偶然馬車を下りたというだけかもしれませんが……」
「いえ、そもそもオーバル子爵家の関与が未確定なことですからね。メルーナ嬢が自発的に失踪した可能性も考えるべきなのかもしれません」