「彼は、いつまでも帰って来ない妹のことをひどく心配しているようだったわ。メルーナからも、兄の悪口などは聞かなかったし、悪い人ではないのではないかしら」
「そうですか……」

 私の疑問を見抜いたのか、ラフェシア様はメルーナ嬢の兄について解説してくれた。
 それは結構、安心できる情報である。場合によって、その兄がメルーナ嬢を害しているのではないかとさえ、私は考えていたからだ。

「それで、彼――名前はマルシドというのだけれど、マルシド様は仲の良い私の元に来ているのではないかと思ったらしくて」
「でも、来ていなかったということですか……」
「ええ、一体どこに行ったのだか……」

 ラフェシア様は、不安そうな顔をしていた。
 付き合いが深いため、私達よりも心配は上なのだろう。それがその表情から伝わってきた。