「それでラフェシア様、メルーナ嬢のことなのですが……」
「ええ、もちろんそのことについて話しましょう。といっても、私が知っていることなど大したことではないのだけれどね……」
「そうなのですか?」
「ええ、私はラウヴァット男爵を継いだメルーナのお兄様から連絡を受けた身だから」
「メルーナ嬢のお兄様……」

 ラフェシア様の言葉を聞いて、私はメルーナ嬢の兄のことを思い出していた。
 その人は、確かモルダン男爵家のシャルメラ嬢と婚約する予定だった人である。それによってラウヴァット男爵は、アヴェルド殿下のことを知ったという話だったはずだ。
 ただ、メルーナ嬢の兄についてはよくわからない。どのような人なのだろうか。オーバル子爵が暗殺の対象に選んでないことから、事件の事実などは知らなかったとは思うのだが。