だからこそ、このように表情を強張らせているのだろう。伝えたのは失敗だっただろうか。しかしここまで言ってしまったら、全てを話すしかない。

「ラウヴァット男爵家に、帰られていないようです。彼女の友人、私の義理の姉になるラフェシア様にも連絡がなくて……」
「……行方不明、ということですか?」
「ええ、そのようです」

 アヴェルド殿下を追い詰めるために、メルーナ嬢は王城に来ていた。
 事件が一段落して、彼女も家に帰った、もしくはラフェシア様のいるディートル侯爵家の屋敷に行ったとばかり思っていた。行方不明になったなんて驚きだ。とても心配である。

「オーバル子爵家の仕業ということでしょうか?」
「オーバル子爵、ネメルナ嬢の両名は牢屋の中です。その状態で、メルーナ嬢を狙うものでしょうか? ああでも、オーバル子爵家には嫡子もいますか。その方が逆恨みを……」