だが彼の表情は、すぐに真剣なものになる。決意を孕んだその表情に、私の肩の荷は軽くなった。彼がどのような結論を出したのか、わかったからだ。

「……まあ、元々俺がやるしかないことだということはわかっていた」
「イルドラ殿下……」
「心強い味方を得られたことは、嬉しいことだ。リルティア嬢、これからどうかよろしく頼む」
「ええ、任せてください」

 私は、イルドラ殿下と固く握手を交わした。
 その力強い握手からは、彼の決意が伝わってくる。
 私もそれに、応えなければならない。王妃としてしっかりと務めていくとしよう。

「といっても、父上もまだまだ健在だからな。俺が王位を継ぐのは随分と先の話となるだろう」
「それはそうですね。その時までに、成長していないと」
「確かにそうだな」

 私達は、そのような言葉を交わして笑い合った。
 イルドラ殿下となら、きっと大丈夫だろう。根拠はないが、その笑顔に私はそんなことを思っていた。