彼は、善意だけで人を助けられる人なのだ。対価と言われて、金銭だとか体だとかは出てこないし、むしろ困ってしまう。そういう人なのだろう。
 思っていたよりは、いい人なのかもしれない。私の中で、イルドラ殿下の評価は少し上がっていた。

「ただ、そうですね。少し相談に乗ってもらってもいいでしょうか? これはイルドラ殿下にも、無関係なことではありませんからね。話してもいいと思っています」
「む、そうかそうか。そういうことなら、心して聞くとしよう。周囲には人もいないようだ。今なら聞くことができる」

 同じ間違いは犯したくないため、私は周囲を見渡した。
 確かに、特に人の気配は感じない。少なくとも目に入る範囲に、人はいなさそうだ。