こちらを真っ直ぐに見つめてくるイルドラ殿下の視線は、少し弱々しい。その視線は、何を意味しているのだろうか。

「いや、単純に心情的な問題として問いかけておきたいんだ。リルティア嬢からしてみれば、俺のようなひねくれ者は快く思えないのではないかと思ってな」
「ひねくれ者、ですか?」

 イルドラ殿下は、私の様子をちらちらと見ながら言葉を発していた。
 自分という存在に、あまり自信が持てていないのだろうか。なんというか、自己評価が低い気がする。
 それに私は、少し驚いていた。イルドラ殿下は、失礼ながらもっと軽薄な感じとばかり思っていたからだ。

「イルドラ殿下は、ひねくれ者ではないと思いますが……むしろ、真っ直ぐな方だと思います」
「……そうだろうか?」
「アヴェルド殿下のことが露呈した時――ベランダで話した時のことを覚えていませんか?」