「とはいえ、その辺りのことはリルティア嬢にはわからないことだ。当然俺にも、だ。ということは、選択肢が限られてくる。いや、俺しかいないか」

 イルドラ殿下の表情は、明るいものだとは言えなかった。
 王位を心から欲しているとか、そういうことではやはりないのだろう。渋々といった感じが、伝わってくる。

 この王子達は、野心というものがないのだろう。アヴェルド殿下の悪行が露わにならなかったのも、そういう所が関係しているのかもしれない。
 敵対者がいれば、あの悪行はすぐに判明したことだろう。あれ程までに、付きやすい弱点はないからだ。

「ただ、リルティア嬢には確認しておきたいことがある」
「え? なんですか?」
「……本当に俺でいいのか?」
「それは……」

 私は、思わず言葉を詰まらせていた。