「……まあ、何があったかは大体わかる」

 私の言葉を受けたイルドラ殿下は、ゆっくりと天を仰いだ。
 その動作に、私は息を呑む。彼の表情が、なんというか少し寂しそうだったからだ。

「ウォーランのことだ。今回の件を気に病んで、王位を辞退したんだろう?」
「え? ええ、それはそうですね」
「エルヴァンは、本が読めなくなるとか言ったか」
「あ、はい。言いました」
「オルテッドは王位なんて、そもそも興味がないだろうな」
「そうですね。そんな感じでした」

 イルドラ殿下は、弟達のことをよくわかっているようだった。
 流石は兄といった所だろうか。弟達のことをよく見ている。

「すまなかったな、リルティア嬢。こうなることは、薄々わかっていたんだ」
「……そうなのですか?」