彼は優しく正義感がありながら、いざという時に色々と割り切ることができる人だ。
 国王というものは、時には非情な判断も求められる。その時にイルドラ殿下は、躊躇せずに判断を下せるだろう。

 それにそもそも、私は知っている。イルドラ殿下が、既に覚悟をしていたということを。
 アヴェルド殿下のことを伝えた時に、彼は自らも利益が得られるという旨のことを口にしていた。それは恐らく、王位のことだ。

 もちろん、彼は心からそれを利益だとは思っていないだろう。その辺りは、私を納得させるための方便であるはずだ
 しかしそれでも、イルドラ殿下は王位を継ぐ覚悟をあの時に既に決めていた。それは他の兄弟達とは大きく違う点だ。

 だから私は、イルドラ殿下の言葉を待つことにした。彼ならきっと、良い答えを返してくれると思っているのだが。