私は、客室にやって来ていた。
 正面には、イルドラ殿下がいる。オルテッド殿下から始まった王子との対話も、いよいよこれで最後だ。
 心配なのは、イルドラ殿下の表情がそこまで明るくないことだろうか。もしかして、彼も次期国王を望んでいないかもしれない。私の頭の中に、嫌な考えが過ってきた。

「あの、イルドラ殿下、先にお伝えしておきたいことがあるのですけれど」
「うん? なんだ?」
「オルテッド殿下、エルヴァン殿下、ウォーラン殿下は王位を望んでいません」
「……なるほど」

 私の言葉に、イルドラ殿下は苦笑いを浮かべていた。
 これは少々、意地が悪かっただろうか。こんなことを言ったら、イルドラ殿下が言えることは限られてしまう。多分、断りづらいことこの上ないはずだ。

 ただイルドラ殿下に断られた場合でも、私は恐らく彼を王位に推薦するだろう。