ウォーラン殿下は、兄のことを褒め称えていた。
 ただ人の好い彼の場合は、例えアヴェルド殿下でも好意的に捉えていたはずだ。普通の人いよりも、大袈裟に言っていると考えた方がいいかもしれない。

「もっとも、リルティア嬢ならそのようなことは既にわかっているとは思いますが」
「え?」
「リルティア嬢は聡明でお優しい方です。そして物事の本質を見抜ける人でもあります。僕はリルティア嬢が判断を誤るとは思っていません。父上があなたに任せたことも正しいと思っています」
「それは……褒め過ぎなような気もしますけれど」

 やはりウォーラン殿下は人を好意的に見過ぎているようだ。
 別に私は、聡明でも優しい訳でもない。ただ単純に、貴族として生きているというだけだ。

 アヴェルド殿下の件だって、優しさで動いていた訳ではない。エリトン侯爵家のために、色々と画策していただけだ。
 そして今も私は、エリトン侯爵家のために動いている。結局私は、そういう合理的な生き方しかできない人間なのだ。