「ですから、僕は王位などは望んでいません。僕は次期国王には相応しくないのです」
「……そうですか」

 王位を望んでいない。そう言われるのは、これで三回目だ。
 イルドラ殿下にまで断られたら、いよいよ後がない。というか、この時点で彼以外の選択肢が消えているというのも奇妙な話だ。

「次期国王に相応しいとしたら、やはりイルドラ兄上です。イルドラ兄上は、今回の件に一早く気付き、動いていました。結果的に多くの犠牲者が出た訳ですが、イルドラ兄上は最善の手を尽くしていました。リルティア嬢の事情も考慮して……」
「それは……まあ、そうですね」
「イルドラ兄上は尊敬できる人です。アヴェルド兄上の本性を見抜けなかった僕でも、これだけは確信しています。イルドラ兄上は聡明で優しい人だと」