私は、王城のベランダに来ていた。
 隣には、ウォーラン殿下がいる。彼とも話をしなければならなかったからだ。
 という訳でやって来たのだが、ウォーラン殿下の表情は暗い。それでわかった。多分、彼も王位は望んでいないのだと。

「……リルティア嬢、僕は愚かな人間です」
「え?」
「メルーナ嬢のことを兄上から聞いていながら、何もしなかった。僕があの時に動いていれば、今回のようなことは起きなかったかもしれません。メルーナ嬢のことも助けられたし、これ程の犠牲者を出すこともなかった」

 ウォーラン殿下は、悔しそうにその表情を歪めていた。
 本当に、心から悔いているのだろう。真面目な彼らしいと言えば、彼らしい発言である。
 しかしそれは、たらればというものだ。その時のウォーラン殿下に、動きようがある訳がない。アヴェルド殿下があんな人とは、思ってもいなかったことだろうし。