イルドラ殿下は、どちらかというと父親の責務について怒っているようだった。
 確かに、王妃様もそのような旨の言葉を述べていた。人の上に立つ者には責任が必要だと。
 私としては、自分が選ばれたことが重要なのだが、確かにそちらも考えるべきことかもしれない。国王様は、一体どうしてしまったのだろうか。

「イルドラ、確かにそれは現国王である私の役目ではあった。しかしだ、私はそれに関して一度失敗している」
「失敗……兄上のことですか?」
「ああ、私の目は節穴だったとしか言いようがない。アヴェルドを次期国王にしていたら、この国は大いに混乱することになっていただろう。それは私の大きな過ちだ」

 国王様は、ゆっくりと言葉を発していた。その口調からは、後悔が読み取れる。
 アヴェルド殿下のことを、かなり気にしているようだ。それは確かに良い選択だったとは言い難い。ただ仕方ない面もある。アヴェルド殿下は、結構巧妙に事実を隠していた訳だし。