「そうかな? 俺にはあなたが、困っているように見える。俺で良ければ、力になってもいいぞ? もちろん、対価はいただくが……」

 イルドラ殿下は、私の目を真っ直ぐに見つめてそう言ってきた。
 彼の言葉は、全てが善意からの言葉という訳ではなさそうだ。彼自身がそう言っているし、それは間違いない。
 ただ、それは私にとってはありがたいことでもあった。そういうことなら、話し合うことができると思ったからだ。

「……イルドラ殿下は、仮に私が何かお願いしたら、どのような対価を望むのですか?」
「うん? そうだな……」

 私が質問すると、イルドラ殿下はゆっくりと目をそらした。
 彼は少し、驚いているように見える。つまり先程の言葉は、本気ではなかったということだろうか。冗談の類だったのかもしれない。