「王家には、誇りというものがあります。人の上に立つ。それは簡単なことではありません。他の人には許されていない特権階級、それが王族です。その地位に就いているからには、その地位に対する振る舞いが求められます」

 部屋の窓際に座る女性は、ゆっくりとそう呟いていた。
 その言葉には、心なしか元気がない。それは当然だ。彼女は息子を失ったのだから。

「つまり、アヴェルドは愚かなことをしてその報いを受けた。それだけのことです。とはいえ、私はあれの母親、人並みに悲しんではいます」

 私の目の前にいるのは、この国の王妃様だ。アヴェルド殿下やイルドラ殿下の母親である彼女とは、何度か話したことはある。
 とても凛々しく、真の通った女性。それが私が王妃様に抱いていた印象だ。王妃として、このような人になりたい。私もかつては、そう思っていた。