「……ネメルナ嬢を拘束しろ!」

 ただ、硬直していたのも一瞬のことではあった。
 国王様がすぐに指示を出し、ネメルナ嬢は拘束されていく。
 彼女の目には、光が宿っていない。裏切られたことによって、衝動的に刺してしまったということだろうか。

「あがっ……僕は、僕はっ……」

 いやそもそもの話ではあるが、彼女がナイフを持っていたのも不可解だ。
 もしかしたら、こうなることをある程度予測していたということだろうか。アヴェルド殿下のことを信じているようで、信じ切れていなかったのかもしれない。

「ど、どうして僕が、こんな目に……う、ぐっ」

 ネメルナ嬢が何を思っていたのかは、わからない。
 ただ、彼女の行動によって起こったことは一大事である。
 ゆっくりとその場に倒れて、動かなくなったアヴェルド殿下を見ながら、私はこれからのことを考えていた。色々と面倒なことになりそうだ。少々億劫である。