「この際だから言ってやるが、君に対して愛情なんて抱いていなかったさ。愛し合っていたなんて冗談じゃない……独りよがりな女め!」
「……」

 アヴェルド殿下は、やけになっているのだろう。ネメルナ嬢に対する本音を、全てぶちまけていた。
 その言葉に、彼女は震えている。流石にこれだけ罵られたら堪えるだろう。
 そう思っていた私は、眩しい光に思わず目をそらすことになった。その光がネメルナ嬢の手元から出ているものだと気付いたのは、少し遅れてからのことだ。

「許さない……」
「え?」
「私の心を弄ぶなんて……許さない!」
「……うっ!」

 私が気付いた時には、既にことが起こっていた。
 アヴェルド殿下の胸には、ナイフが突き刺さっている。
 二人は隣り合っていたため、躱す術も誰かが割って入る隙もなかった。その一瞬の出来事に、周囲は呆気に取られてしまっている。