それをアヴェルド殿下は、切り捨てた。彼の方には、愛などはなかったということなのだろう。ネメルナ嬢は、彼にとっては都合が良い存在でしかなかったのかもしれない。
 わかっていたことではあるが、アヴェルド殿下は最低の人間であるようだ。

「大体、君はいつも勝手だ。僕の意見も聞かずに王城に来たり……何を考えていたんだ? そんなことをしたら、僕達の関係がばれるというのに」
「ばれることが、そんなに不都合だというのですか?」
「当り前だろう。君みたいな子爵家の令嬢に本気な訳がないだろうが! 君は頭も悪いし、次期王妃の器じゃない」

 アヴェルド殿下は、口汚くネメルナ嬢を罵っていた。
 当然のことながら、私も彼女にはいい印象は抱いていない。彼女がやっていたことも、充分罪深いことだといえる。
 ただアヴェルド殿下の言葉は、ひどいものだと思った。そもそも彼は、ネメルナ嬢よりも罪深い人だ。よくそんなことが言えたものである。